会社を設立したら、税金、社会保険、労働保険について諸官庁へさまざまな届出を提出しなければなりません。
会社には、税金、社会保険、労働保険を支払う義務があるからです。
届出をしないと、のちのち思わぬ多額の出費を強いられることがありますので期限内に手続をすませましょう。
1.税務署への届出
税金関連の書類は、提出が遅れると、税務上思わぬデメリットを受けることがあります。
本店所在地の管轄税務署に対して、必要書類を期限内に提出するようにしましょう。
①法人設立届出書
法人の設立を税務署に届け出るための書類です。
法人設立届出書には、会社の実印を押します。
税務署は、この書類に基づいて必要時期に申告書等の必要書類を郵送してきます。
この届出書は、納税地の所轄税務署長に対して会社設立の日以後2ヶ月以内に提出しなければなりません。
また、法人設立届出書を提出するに当たり、定款等の写し、履歴事項全部証明書、株主等の名簿、設立趣意書、設立時の貸借対照表の5つの添付が必要です。
更に、現物出資を行った場合には、出資者の氏名、出資金額及び出資目的物の明細を記載した書類も添付しなければなりません。
②青色申告の承認申請書
青色申告とは、正規の簿記に基づく帳簿をつけ、あらかじめ税務署長の承認を得ている納税者にさまざまな税務上の恩典を与える制度です。
青色申告を採用すると、次のような節税メリットを享受できます。
その他、青色申告をしていることを条件とする優遇措置は数多くあります。
青色申告は、節税メリットがあるので、必ず採用しましょう。
とくに会社設立初年度は、赤字となることが多いので、青色申告の承認を受けてその赤字を翌年以降に繰越し、将来の利益と相殺することにより、節税を計るべきです。
青色申告をする場合には、「青色申告の承認申請書」の提出が必要となります。
設立第1期目から青色申告の承認を受けるためには、設立の日以後3ヶ月を経過した日か、設立第1期の事業年度終了の日の内、いずれか早い日の前日までに提出しなければなりません。
提出が期限を越えると無効となりますので、ご注意ください。
青色申告を選択した場合には、メリットを享受する対価として、正規の簿記にもとづく帳簿の備付け、帳簿に基づいた申告、帳簿や証憑の一定期間の保存などが義務付けられます。
③給与支払事務所等の開設届出書
会社を設立したら、従業員の有無にかかわらず、源泉徴収を行う給与支払事務所を開設したことになります。
この届出書を必ず提出する必要があります。
所轄の税務署へ設立から1ヶ月以内に提出しなければなりません。
④源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書
原則として、源泉所得税は毎月徴収し、翌月10日に納付しなくてはなりません。
年間12回の納付が必要となり、とても手間がかかる作業となります。
しかし、この届出書を提出することにより、給与等の支払人数が常時10人未満である会社なら、7月と1月の年間2回に、それぞれ半年分をまとめて納付することが認められます。
それにより、源泉税納付に関する事務工数を大幅に削減することが出来ます。
この書類は、適用を受ける月の前月末までに提出しなければなりません。
メリットが大きいので、必ず提出しておきましょう。
⑤棚卸資産の評価方法の届出書
期末に残っている在庫は、経費にすることはできません。
資産として計上する必要があります。
評価の仕方には、次に挙げるようにいくつかの方法があり、どの方法を選択するかにより、在庫商品の金額は変わってきます。
在庫の時価が取得原価を下回る恐れがある会社では、低価法を選択しておきますと、時価が原価を下回った場合には、その値下がり損失を費用に計上して、税金を削減することができます。
「棚卸資産の評価方法の届出書」を税務署に提出することにより、在庫商品の評価方法を選択します。
提出期限は、最初の確定申告書の提出期限となっています。
この届出書の提出は、任意となっており、届出をしない場合には、最終仕入原価法による原価法を選択したものとみなされます。
評価方法を変更するには、税務署長の承認が必要です。
⑥減価償却資産の償却方法の届出書
固定資産の取得価格は、買ったときの費用とすることはできません。
価値の減少に応じて各事業年度の費用に割り振られます。
この費用配分計算を減価償却といいます。
減価償却の対象となる資産には、有形固定資産と無形固定資産があります。
土地は、価値が減少しないので減価償却はできません。
減価償却の方法には、毎年一定額を費用計上する定額法と、帳簿価額に償却率を掛けて計算する定率法があります。
建物と無形固定資産は、定額法しか認められていませんが、それ以外は、「減価償却資産の償却方法の届出」を税務署に提出することにより、資産ごとにいずれかの方法を選択することができます。
どちらの方法が節税になるかは、会社の利益計画によります。
高額な減価償却資産を取得する予定であれば、専門家に相談されたほうがよいでしょう。
提出期限は、最初の確定申告書の提出期限です。
仮に、この届出書を提出しなければ、定率法により償却計算されます。
償却方法を変更するには、税務署長の承認が必要です。
⑦役員報酬の決定
役員報酬は、毎月の支給額が同額でないと、経費にできません。
しかも、この支給額は、会計期間開始から3ヶ月以内に、決定しなければなりません。
新しい会社の場合には、設立日から3ヶ月以内です。
事業計画を策定し、会社が赤字にならない範囲で、税金コストを最低にするレベルに役員報酬を決定する必要があります。
⑧消費税の届出
資本金が1,000万円未満であれば、設立から2事業年度、免税業者となります。
ただし、6ヶ月の売上及び給与額が1,000万円を超えると翌年から消費税が課税されます。
消費税は、必ず納付が発生するわけではありません。
支払った消費税が預かった消費税より大きいとその差額が還付されます。
多額の設備投資をするときなどは、支払った消費税が預かった消費税よりも大きくなりますので税金が戻ってきます。
ただ、その場合には、免税事業者の場合には、還付されないので、課税事業者になることを自ら選択しなければなりません。
設立後大きな設備投資を予定されている場合には、支払った消費税が預かった消費税より大きくなるので、「課税事業者選択届出書」を提出して課税事業者を選択した方が、消費税の還付を受けられるので得です。
「課税事業者選択届出書」は、適用を受けようとする事業年度の初日の前日(設立事業年度の場合は設立事業年度の末日)までに、税務署に届け出る必要があります。
2.地方税の届出
会社は、都道府県や市区町村にも住民税、事業税などを払っています。
そのため、自治体にも法人設立届出書(事業開始等届出書)を提出する必要があります。
この届出は、法人の設立を地方自治体に通知する書類です。
法人設立届出書は、会社の実印を押します。
都道府県税事務所と市区町村役場に提出しなければなりません。
東京都23区の場合には、都税事務所だけに提出すればすみます。
添付書類は、定款の写しや登記事項証明書です。
この書類に基づいて必要時期に申告書等の必要書類を郵送してきます。
提出期限は、地方自治体によって異なりますが、東京都の場合には、事業開始の日以後15日以内に提出しなければなりません。
3.社会保険の届出
社会保険には、健康保険、介護保険、厚生年金保険があり、すべての会社に加入義務があります。
新規適用届、新規適用事業所現況書、被保険者資格取得届などの書類を年金事務所へ提出します。
代表者や役員も被保険者となります。
パート、アルバイトも常用的に雇われていれば、被保険者となります。
保険料は、標準報酬月額に基づいて算出され、事業主と被保険者が折半します。
4. 労働保険の届出
労働保険には、労災保険と雇用保険があります。
1人でも従業員を採用したら強制適用事業所となります。
労災保険、雇用保険ともに、保険料は、賃金に保険料率を掛けて計算します。
労働保険料は、社会保険と異なり、前払いです。
労災保険は、全額が会社負担、雇用保険は会社と労働者双方が負担します。
経営者は原則として被保険者となりません。
労災保険は、労働基準監督署で加入手続きを行い、雇用保険は、ハローワークで加入手続きをします。
まず、労働基準監督署に労働保険関係成立届、労働保険概算保険料申告書などを提出します。
次に労働保険関係成立届の受付印が押された控えを持参して、ハローワークに雇用保険適用事業所設置届、雇用保険被保険者資格取得届などを提出します。
提出期限は、従業員を雇用してから10日以内です。
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会社を設立すると、社会保険への加入が強制されます。
社員をまだ雇用していない、役員だけの会社でも、健康保険や厚生年金へ加入しなければなりません。
社会保険への加入は、会社負担分も発生するこを考慮すると大きな負担となります。
しかし、現実的には、社会保険に加入しなくとも、従業員数人の会社に年金事務所が調査に入ることはありません。
年金事務所の加入指導は、原則的にある程度以上の従業員数の事務所を対象としているからです。
ですので、小さな会社は、社会保険に加入せずに、国民年金と国民健康保険に個人で加入するほうが、ほとんどの場合に負担が小さくなります。
国民年金の保険料が厚生年金よりも安いからです。
支払う社会保険料が少なくなるので、その分だけ将来もらえる年金額が減少するというデメリットはありますが、設立後の会社は、当面の資金負担を軽くしたいはずです。
特に社員がまだおらず、社長や身内だけの会社なら、資金繰りを少しでも良くするためにこのデメリットは受け入れられるでしょう。
さらに健康保険については、2年間の任意継続を利用すればさらに節約できる場合があります。
任意継続とは、社会保険の被加入者が退職後も、健康保険を継続できるしくみです。
通常、社会保険は、半額は、事業主が負担します。任意継続の場合は、ご本人が全額負担となりますが、上限が設定されていますので、結果として、国民健康保険に加入した場合にくらべて、負担を抑えることができる場合があります。
現在は、2万8,000円ぐらいが保険料の上限となっています。
国民健康保険は、住んでいる市町村区によって保険料率が違いますので、お住まいの市区町村のホームページ等で料率を確認してシミュレーションをしてみてください。
計算が煩雑だという人は、自治体の窓口にいけば教えてくれます。
任意継続の方がお得なケースが多いのでぜひご検討ください。
健康保険の任意継続に加入するためには、健康保険の被保険者期間が2カ月以上あり、資格喪失日から20日以内に手続きをする必要があります。
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